チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】ブゴニア(ネタバレ有)_最期くらいは甘美な夢を見させて

皆さんは、無茶な主張を繰り返す、話が通じない人に会ったことがありますか?

■は、会ったことがあります。
彼らは、他者と会話をすることに興味がありません。自らの理論を振りかざし、それらに耳を傾け肯定してくれる人々を求めています。それ以外の人間は敵であり、自分の考えを否定したり、不要と切り捨てる者たちには激昂し彼らをひどく敵視します。そしてそのような主張を認めてくれる相手は稀であり、彼らは基本的に孤独です。

裏を返せば、肯定してくれる相手に出会ってしまえば最後、彼らはひどく素直に従順になることでしょう。自らの夢見た理想を愛してくれる同志を見つけられたことを喜び、いずれは荒唐無稽な発言ですら信じてくれるようになるかもしれません。哀れな操り人形の如く。ただ彼らは、信じてほしかっただけなのです。見てほしかっただけなのです。自分の素晴らしい考えを。何よりも、自分のことを。

 

……と、これは又聞きの話であり、あくまでそういう考えもあるらしいという前提とさせていただきつつ、思い出してしまいましたね、この話のこと。

本作SFコメディという位置づけのようでございますが、まったく、これっぽっちも、笑えないでございます。

 

映画『ブゴニア』の感想です。

簡単あらすじ

片田舎の一軒家で、テディとドンはある計画を立てていた。曰く、今世界が注目している女性敏腕CEO・ミシェルの正体は宇宙人であり、地球を守るためにその宇宙人と交渉する必要があるという……。業務を終え帰宅するミシェルを二人は不意打ちし、誘拐に成功する。目覚めたミシェルは現状に戸惑いながら自らは宇宙人ではないと訴えるも、独自の理論に酔ったテディには全く通じる様子がなく……。

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★★(星4)
※若干の暴力描写あり

 

ネタバレなし感想

■初ヨルゴス・ランティモス監督作鑑賞!

『ロブスター』『哀れなるものたち』『憐れみの3章』など、怪作とも呼ばれる印象のある作品を作り出してきた監督ヨルゴス・ランティモス氏の最新作! 独特の雰囲気にまみれたポスターや予告に惹かれ、監督の作品を初鑑賞してきました。

結論から申し上げますと、私この監督の作品はかなり好きな予感がいたします。
台詞回しであったりとか、撮影構図であったりとか、この監督にしか出せない持ち味みたいなものを感じたので……とはいえ本作はそのユニーク度合いは割と控えめなのかも? とは思ったのですが。独特な場面もあるにはありますが全体からの割合は少なめ。
ロケーションもあまり変わらない中、不思議とまったく飽きさせない映像がたっぷり詰まっており感嘆いたしました。間違いなく他の映画も面白いに違いない。『哀れなるものたち』観たい。ぜひリバイバル上映で……絶対映画映えする映像ですもの!

 

■楽曲、何!?

その……絵面に反して楽曲が派手すぎてギョッとすると申しますか……。
もう既に公式から楽曲がUPされておりまして、個人的に特に圧倒された楽曲をこちらに埋め込ませていただきます。

www.youtube.com

なんというか詳しいことはわかりませんがジャンプスケアみたいな音圧しとる! 映画の展開としては別にジャンプスケアでもなんでもないのに! 確か。
既に独特かつかなりリッチな楽曲が多い印象なのですが(オーケストラみたいな)、これらの楽曲が作中でふんだんに用いられておりまして、絵面は本当に地味めなのに、ここでこんな曲流すことあります!? みたいな。音圧で無理やり笑わされている気がする。全然笑える展開じゃないのに。

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画『ブゴニア』のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

どう噛み砕いたらいい?

本作、これに尽きる。

その、とにかく全体として陰謀論者を皮肉っていることはわかるのですが……で、優秀な人を「あいつは宇宙人だ! 俺達と違うからあんなに優秀なんだ!」と決めつければ楽ですし――ただ本作のテディに関しては、母親がミシェルの会社の作ったモノによって被害を受け植物状態になっているらしいことがわかるためそうシンプルな話ではないのですが。陰謀論のきっかけはこういう身近で残酷な問題だよ、という話なのか。あるいは究極の人間愛なのか。人間ならこんなことをしない、人間でないからこんな残酷なことができるのだと信じているがゆえなのか、だとしたらどれだけ純粋で哀れなことか――そして彼らにとっては常識やルールというのは大した問題ではなく、それらがとっくに壊れてしまっているからこそ、常人では考えられない行動を起こせてしまう状態にあって……。

もうずっと鑑賞していてどういう気持ちになればいいのかわからなかったのですよね。ミシェルがあまりにも不憫すぎやしないかという気持ちになればよかったのか、テディの突っ走りっぷり(理論の無茶っぷりとそれらを通す以外の選択肢がないほどに追い詰められている状態)に引いてしまえばいいのか哀れに思えばいいのか、そんなテディに依存するしかないほどに周囲にきっと味方がいなかったドンをやはり哀れに思えばいいのか……。そもそもミシェルはミシェルで清廉潔白な素晴らしい人間ではなさそうなのも若干伺えますし(だからといってこんな理由で誘拐されるのは荒唐無稽が過ぎる)、どう……どう解釈しようかなあと。

本作は別に誰に感情移入する話でもないとは思うのです。ただ、なんというか少しずつ日常や世界、自分の考えとの共通項を見つけて微妙に凹む作品というか。お前もいつこうなるか分からないのだぞ、その思考がいずれ人間を滅ぼすのだぞと指さされているような気がして。
ああ、宇宙に行けたら。宇宙から観た地球はきっと綺麗なんでしょうね。平面かどうかはさておきとして。
月食まで残りX日の場面で頭を抱えました。へ、平面の地球……!

……アメリカでは地球平面説が今もメジャーみたいな話をどこかで聞いたのですが、そのあたりももしかして皮肉られていますか?

www.cnn.co.jp

どこかで聞いたけど勘違いだった! と思いたかったがそうではなかったみたいです。

日本でもコロナ禍あたりで普段ネットに触れない方がネットに触れる機会が増えたこともあり陰謀論めいた言説に心酔する方が増えたという話を聞きますが……なので本当にこの映画笑えない。全く笑えないのですよね。もしかしたら、近くの誰かがいつテディになるかもわからないし、いつドンになるかもわからないので。

 

ラストシーン周辺について

私は、あの情景はテディの夢見た世界だと解釈したのですが、鑑賞された皆様はいかがですか。

つまるところ、テディが死ぬことなく交渉を成功させていたなら、本当にテディとドンはヒーローに成っていた。けれどそうならなかったから、アンドロメダ星人によって皆死んだ。俺のことを信じていればこうはならなかったのに。ざまあみやがれ。

そう思って死んだのかなあと。

あるいは……これ、陰謀論と思えるようなことが本当かもしれないから邪険にしたらあかんかもよという話でもあるのか。だとしたら嫌だなあ。でも過去の歴史でそういうことはいくつもある。馬鹿にされていたことが実は真実で、なんて話は珍しくない。大発見と陰謀論は紙一重?

何はともあれまずは相手の話に向き合って、それから考えるのがいいってことなのかな。きっと小さい頃からそう言う話し合いができていれば、テディはこうならなかっただろうし、ドンだってきっと無事だっただろうから。

 

 

映画『ブゴニア』の感想でした。

『パラサイト 半地下の家族』の製作陣が携わっているということで、すごい家が出てくるのかと思ったのですがそうでもなかったですね。いえオフィスはすごかったですが。ガラス張りすぎて落ち着かない! 家は……家自体の雰囲気は生活感がすごい印象でしたが、やはりあの地下室謎エリアが気になりましたね。一体テディはどこまで行ってしまっていたのか……。

 

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