猫はほぼ無事です(重要)。
何かの勘違いで犬映画かと思っていましたがこちら猫映画でございました。事前の認識違いをここに謹んでお詫び申し上げます。なんとなく映画界で活躍しているのは犬優の方のイメージがございましてですね……それこそ去年の「スーパーマン」とか。
ですが猫優の方も間違いなく負けておりません。本作、そう強く感じられた映画でございました。が、それと同時に思ったより重い映画だなぁとダメージを受けたのも本音であり……事前情報を仕入れないというのはこういうリスクもございます。ぐわあ。
映画「コート・スティーリング」の感想です。
簡単あらすじ
※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※
Filmarks短評
映画『コート・スティーリング』のレビューを書きました! https://t.co/Wxfc6kRD2t #Filmarks #映画
— チネローテル大家 (@cinerotel) 2026年1月11日
猫映画‼︎
だいぶ不条理すぎるタイプの巻き込まれ物語だった
評価:★★★★(星4)
※ちょっぴりの性描写とまあまあの暴力描写あり
ネタバレなし感想
■猫はほぼ無事です
大切なことなので二回記載いたしました。ほぼ無事です。若干怪我するシーンがありますが明確なシーンは描かれませんのでその点はご安心を。ネタバレかもしれませんが大事なことなので(とても)。
前述の通り本作、猫映画でございます。というのもこちらの猫様、劇中の7割くらいは主人公・ハンクの側にいる「バディ」役なのです。びっくりするくらい演技派でございます。まず可愛らしい。そして品がいい。振る舞いが実に美しい。そしてどういうわけかハンクにだけ懐く。どんなに大変な目にあってもハンクの元からは逃げないのがなんともいじらしい。そして、可愛い(重要)。
本作はかなり暗い内容です。雰囲気が全編を通して暗いわけではないのですが、ハンクが相対することになる現実が結構厳しめ。そんな本作における圧倒的救いであり圧倒的癒やしがバドなのです。バドがいなければ、この映画を最後まで鑑賞できない方もいらっしゃるやもしれません。超重要でございます。
ありがとうバド。ありがとうトニック・ザ・キャット(芸名)。
■洒落た雰囲気とカメラカット
本作はアクション寄りヒューマンドラマ作品と考えているのですが、アクションやドラマ部分問わずとてもカットの雰囲気が練られていてとても画になる場面が多かったです。裏路地をちょっと歩いても、夜道でタクシーを読んでも、車の中でも。ハンクの部屋やバーなど、比較的狭い範囲・同じ場所でのドラマパートがある印象でしたが観ていて飽きない。魅力的に思いました。
使い方によっては冗長になりがちなスロー演出も効果的に使われていたのではないでしょうか。過去の回想場面とか、いいですよね。
劇伴もお洒落さに一役買っていたように思います。あとあの、これはネタバレに含まれないと信じて記載してしまうのですが、冒頭部分がイカしすぎていて痺れました。冒頭カットがどんな場面か個人的には重要視する傾向があるのですが本作かなりイイ。
せっかくですので、本編シーンが使われた主題歌動画が挙がっていたので貼っておきます。冒頭からお洒落です。限られたシーンしか使われていないので(バドの出番がないのは残念ですが)ネタバレの心配はあまりないですが気になる方はお気をつけください。
ネタバレあり感想
ご覧になる際はご注意ください。
悪夢を煮詰めたみたいな現実
ハンク、ここまでされるほどなんか悪いことしたか!?
本作、ほぼ不条理ホラーです。事実確認を一切しない悪人どもにより、ハンクの周囲が容赦なく滅茶苦茶にされます。腎臓破裂からの摘出で大好きなお酒がNGになったこと時点でもだいぶよくないのに、そのままマフィアに命を狙われるわいい感じだった恋人は殺されるわ家にいられなくなるわ信頼した警官は裏切りを起こすわで体も心もズタボロ状態、こんなに転がり落ちまくることあります!?
理由らしい理由。もしかしたらハンクが若い頃に起こした自業自得めいた(あれ飲酒運転してましたよね? そうでなくとも前方不注意ではあるのですが)事故により、ほぼ約束されていたメジャーリーガーという将来を棒に振ってしまったこと、そしてその時同乗していた友人を殺してしまったこと――しかも事故当時友人のことではなく自らの脚の怪我と将来の心配を優先して考えてしまった後ろめたさ――、そしてそれらから逃げるように生きて、テレビの向こうのジャイアンツにヤジを飛ばすしかなくなったという明らかな過ちを犯し、その上その過去から逃げ続けのうのうと生きてきたツケが回ってきたということなのかもしれません。それにしたって、ではありますが。
でも現実ってそういうところ、ありますからね。こっちの事情なんてこれっぽっちも汲んではくれません。その現実を目の当たりにしても折れないハンクは本当に凄い。ろくでもなかろうとタダで死んでやるものかという意思が目に宿り続けている。
恋人に言われていた、逃げ続けていた過去と向き合う覚悟を決めるハンク。間違いなくヒーローの精神を宿していることでしょう。世界が違えば漫画の主人公になっていたかもしれない。本編終了後時系列の物語も何本か作れるかも。
それはそれとして、ハンクがバドと海を眺める場面で警察(笑)から母親の住所を告げられる脅し電話を受けたシーンのハンクは、ほんのちょっぴり死を考えたんじゃないかなあとは思いました。そのまま水に入っていってしまうんじゃないかと観ていて怖かったです。でも彼はバドを託された。バドを遺すわけにも、一緒に死ぬわけにもいかない。母親のこともありますしね。優しくて強い子であるのは確か。絶望らしい絶望をしていない気がするんですよね彼。凄いよほんま。
最後南国のどこか、海の見える場所でバドと一緒にいるシーンいいですよね。同じ要素があるけれど見える景色と意味が違う。これからもハンクはバドと逃げ続けるのでしょう。
悪人は人間だけどやっぱり悪人だった
嬉しいポイント。悪人にも生活あり、悪人にも事情ありという展開はよくある話ですが個人的にはその点を強調されるとどういう心持ちでいればいいのかわからなくなるので、悪人は最後まで悪人でいてほしい派なのです私(もちろん状況次第ではありますが)。
本作の兄弟、優しそうなツラをされておりますし、食事を分けてくれたりお金を分けてくれようとしたり「裏社会だけどいい人」みたいな面を見せてくるキャラクターだったので、ああそういう方向に着地するのかなと若干の落胆を抱えていたところであのピストル型のライターですよ。痺れましたね~~。この兄弟は人を殺して、殺した人間の品を盗んで使っている。しかも、ライターの持ち主はハンクの恋人! 最悪!! 車の着火装置をハンクが脱出のために使っていなかったらこの展開はなかったというのもまたミソ。彼の選択が未来を決めている。
殺し屋に殺される人間は割と舞台装置化してしまって、人が死ねば死ぬほど感覚が麻痺して登場人物も観客も死に慣れてしまう印象があるのですが、この瞬間の画面に色がついた感といいますか、そうだこいつ悪人じゃん!! と思い出すような場面本当に素晴らしかったです。我に返ると言うか冷水浴びせられるというか。
そこからのハンクによる怒りのGOGOドライブは爽快でございました。ずっと、昔のトラウマにより深く踏めていなかったアクセルをドカンと踏んで、かつてはうっかり突っ込んでド・大怪我をし未来をぶち壊してしまった柱に今度は恋人への復讐のために自分の意志で突っ込んでいく。もしかしたら未来のためもあったかもしれません。バドのこと庇っていたし一緒に逃げる気だったんだろう。なんとアツい展開か。本作、こういう過去のトラウマの使い方というか解消の仕方・向き合い方がすごく上手いなと思う場面が多かったです。全部意味があるんだ。
それはそれとしてこの場面バドのことが不安で仕方なかったですが無傷そうでよかったですでも危ないよ~すっごく危ないよ~! こんな無茶をしてもハンクのもとから逃げないバドがあまりにも愛おしすぎる。
ここから自分のゲームを始めよう
ラストシーン大好きなんですよね。
ずっとジャイアンツの勝利のことを考え続けたハンクが、たどり着いた南国の僻地っぽいどこかで、野球中継の流れるテレビを自らの操作で消す。ブラウン管テレビの画面には、ハンクとバドが映り込んでいる。
ここでようやくハンクは、車の事故の頃からなにかが狂って滅茶苦茶にされながらも走り続けたルートを自身の行動で外れることができた。ここからやっと自分の人生を歩けるのだろうな、というメッセージと受け取りました。好き過ぎる。
ハンクは自分のうだつの上がらないぬるま湯のような(けれど幸せではあった)日常を、車の事故を理由にしてのうのうと避けてきたのではなかろうか。バーで酔いつぶれ愚痴っていたという恋人の発言もありましたしね。けれど結局は事故の原因が自分にあったのと同じで、ハンク自身の選択が今のハンクを作り上げてきていて、実際本編でもハンクの行動が未来に良くも悪くも繋がっていたと感じました。そのことを認められるまでのドラマだったのかなあと。
本当にろくでもないことばかり起こってしまった本作ですが、ある意味救いの話ではあるのかも。自分の選択で人生、もとい世界は変わるという希望の物語ではあるので。しんどくて俯いても、足元には可愛い猫ちゃんもいますゆえ。
映画「コート・スティーリング」の感想でした。
本作、エンドクレジットすごく遊んでて面白かったです。クレジットって、絶対に守るべきレギュレーションとか……ないんだ……! 一部、ゲーム「UNDERTALE」のPルートみたいになっていて笑いました。自由って最高!!
自由といえば猫。トニック・ザ・キャットに助演猫優賞をお与えください。何卒。