チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】超かぐや姫!(ネタバレ有)_圧倒的良素材と圧倒的いろは・エクス・マキナ

皆さんは、おとぎ話はお好きですか?

私はそこそこ好きでございます。『シンデレラ』『人魚姫』『桃太郎』『赤ずきん』……バッドエンドからハッピーエンドまで、様々なラインナップを取り揃えておりコンテンツ性が高いでございますよね。ただ、原作がバッドエンドだとしても或る企業が子供も大人も楽しめる形にアレンジすることによりハッピーエンドになる例もあるわけです。その裏でどのような自体が起こっているかは一旦置いておいて、やはり多くの人はハッピーエンドを求めるものです。バッドエンドの旨味を咀嚼するには、現代人は疲れすぎているのかもしれません。

私はバッドエンドを咀嚼することで気力が回復する稀有な例なので、もっと増えてもいいと思うのですがね、バッドエンド。いえ嘘です撤回します。自らが少数派であることは理解しておりますので、適度にそれぞれの良さを主張できるようなバランスが望ましいですよね。

それはそれとして、ハッピーエンドはそこに至るまでの過程や経緯が大事だと思いませんか? それらが美しければ美しいほど、面白ければ面白いほどエンディングの価値は増すわけです。

そのあたりが弱いのが気になったかも……な、圧倒的良素材で作り出されたネトフリ映画を鑑賞してまいりました!

 

映画『超かぐや姫!』の感想です。

簡単あらすじ

文武両道才色兼備を形にしたような超人高校生・いろは。自らの生活費や学費を稼ぎながら勉強に勤しむ日々。彼女の癒やしは、VR空間<ツクヨミ>でのゲームと推しのAIVTuberヤチヨだった。ある日、疲弊しきったいろはの前に七色に輝く電柱が現れ、中には謎の赤子が。成り行きで赤子を育てることになったいろはだが、赤子はあっという間に少女に成長。わがまま放題の彼女を「かぐや」と名付け、そのまま共に暮らすことになる。いろはと遊べず退屈の果てにVR用コンタクトを購入してしまったかぐや。またしても成り行きで、二人は<ツクヨミ>にダイブする――

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★★(星4)

ネタバレなし感想

■素材は間違いなく一級品!(特に楽曲!)

作画、楽曲、キャラクターデザイン、世界設定……これらは間違いなく一級品です。長過ぎるスタッフロールと並んだ人数の多さで相当なお金がかかっていることを察することができました。ライブシーンが何箇所かあるのですがそちらも素晴らしい。CGではなく手書きのように思えましたが、凄い技術だ……。

一番凄いなと感じたのは楽曲です。カバー楽曲も様々ありますが、本作のために作られたオリジナル楽曲がどれも素晴らしかったです。鑑賞後に楽曲を聞き直すと沁みるものがございます。本作、周回したほうが面白いという前評判があったのですが曲含みのことだったのかとわかり、納得いたしました。

個人的には『瞬間、シンフォニー。』が一番好きでございます。40mP、ありがとう!

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『Ex-Otogibanashi』はあまりにもsupercell詰め合わせ過ぎて変な笑いが出ました。やりすぎですよ。

本作において私の心に刺さり涙を流してしまったシーンが一箇所ありまして、『星降る海』という楽曲が流れるライブシーンでございました。映像の美しさと言うより楽曲の素晴らしさというか、言葉にならない感情のようなものをぶつけられた気がしたのですよね。物語の登場人物よろしく「なんでここで泣いているんや!?」になっておりました。

鑑賞後改めて楽曲を聞いて、あの楽曲の意味を真に理解し、なぜ自分が涙を流したのかをも理解しました。楽曲に込められた感情そのものをモロに食らってしまっていたみたいです。何も知らなくても感動ってできるのですね。凄すぎる。

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■リアリティの欠如

本作、素材は本当に一級品なのですが……。脚本が少々無理がございまして。あまりにも主人公のいろはが超人すぎておかしいことと、全てがトントン拍子で上手く行き過ぎるというところ。前者はさておき後者に関しては間違いなく時間的制約による描写不足かと。あの……映画にする必要ございましたかこれ。1クールあたりのNETFLIXアニメにするわけにはいかなかったのでございますか?

もちろん創作において、夢がある話というのは素晴らしいことです。ですが、現実世界と類似点が多い世界観ですと、こんなにうまくいくはずがないだろとか、システムはどうなっているのだとか、どうしても違和感が強くなってしまいます。

いっそもう<ツクヨミ>世界だけでも良かったのでは? ファンタジー世界か近未来SFに振り切るなどして。いえ、バーチャルと現実とそれぞれの軸があることが重要なのはわかるのですが……やりたかったことというかオチの付け方もだいぶ強引といいますか、時間に対して詰め込み過ぎな印象が強すぎるのですよね。

制作側の都合みたいなものがちょいちょい見受けられるのが惜しい。本当に惜しい。

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画『超かぐや姫!』のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

いろは・エクス・マキナの話をしようか

いろはさん、あなた流石に実在性なさすぎるでございますよ。

いろは、間違いなく機械仕掛けの神*1でございます。もっと言えばかぐやもプログラムをポンと書いているところを見ると結構チートなのですが、そのチートっぷりがあまり活かされないというかほぼ見せられずに終わるのですよね。ま、まあ一応ゲームと歌が上手いのはチートスキルか……? いろはが超人過ぎてかぐやが霞む!

言いたいことは色々あれど、とりあえず、いろはが飲食店で働いている理由がさっぱりわからなかったですね。それだけの優秀さがあれば、近未来なのだし何らかの特許物作ってサクっと稼いじゃいそうな感じがある。たぶん狭いワンルームにいろはとかぐやを一緒に住まわせたかっただけなのでしょうけれど。

本作、間違いなくやりたいことはラストの部分というか、かぐやといろはの再会だと思うのですよね。新解釈かぐや姫SF。たけのこがコードに繋がれていて……というのはかなり面白かったですしあのあたりもっと観たかったのですが。何にせよそこから逆算した結果だ~いぶ無茶過ぎるキャラ設定になっている。さすがに無視できませんでございます。

 

苦しみが薄い

本作、困難が困難らしく描かれていません。なんというか全体的に苦しみが薄い。
一番の困難は序盤のかぐやのわがまま放題場面なのではとすら思ってしまう。必要以上に不快指数が低いのですよね。悪役らしい悪役がほぼいない(いろは母が障壁として描かれはするがエピソードが少なく他人事感が強すぎてピンとこない、兄も障壁の一つとして描かれるが敵意はない、月の従者も敵っぽさは薄い)ですし、ライバー活動における炎上や叩きなどもなく、日常生活における困難らしい困難もなく、いろはの成績ダウンもさらっと流される。な、なんか薄い! ダイジェストっぽさが否めないのです。時間が足りない!! 

多少は不快指数を意図的に下げている感じはしますね。しんどい場面を観られるほど、現代人の心の余裕はないのやも。もちろん本作のしんどい部分はヤチヨの境遇ではあるのですが、あれも必要以上に重くは描かれておらず、視聴者が想像して涙する範囲なのですよね。もっと苦しみを描いてもいいのにそうしなかった。個人的にはそういう部分があってこそ感動がついてくる気がするのですが……(お陰で後半は感情がそこまで動かず、あ~なるほどそういうことか、くらいの気持ちで観ておりました)。

というかラストはライブで〆ないんですか!? どうして!? 力尽きてしまったのか……。いろはとヤチヨ/かぐやの再会の喜びシーンもうっすい……どうして!?

時間が……時間が足りない……!!

 

おとぎ話ってそういうものかも

結局本作、加点方式ではどんどん評価が上がるのですが減点方式だと結構気になるところがあり……という感想になるのですよね。

ただ本作、カジュアルに楽しむには間違いなく良くて、事実こういう気になる部分を差し置いても普段映画などを観ない層にも届いている感じはございます。
皆が知っている『竹取物語』を題材に、受け入れやすい設定と可愛らしいビジュアルとキャラクター、売れる要素をしっかり盛り込んで楽曲を手堅く用意し、お手軽にSFも感じられちゃう本作。なんといいますか、一種のアニメ映画入門的存在なのかもと感じました。おとぎ話もそういうところございますよね。

本作の鑑賞後の気持ちは『落下の王国』を鑑賞した後と似ていましたね。おとぎ話だし細かいことは気にしなくていいのかもな! みたいな。考えすぎずに堂々と何周もしとけよな! みたいな。そうかも。創作って、そうあるべきだったよな。

 

映画『超かぐや姫!』の感想でした。

この一作で終わるのシンプルに勿体ないのでやっぱり1クールでアニメ化するのどうですかね? Netflixの資本ならいけるでございましょう!? よろしく頼みますよ! 絶対にかぐやがいろはの学校に侵入して大騒ぎになる回とか、Vtuberランキングのしあがり中にライバルと出会い切磋琢磨する回とか、現実世界でかぐやがファンに見つかって大騒ぎになる回とかあったございましょうよ! ね!?

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www.cho-kaguyahime.com

*1:デウス・エクス・マキナ。絶対的パワーで強制ハッピーエンドにして物語をめでたしめでたしにしてしまう手法。基本的に経緯や成長が省かれるため納得感が薄くなりがち