チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】エディントンへようこそ(ネタバレ有)_雑然の具現化

映画の予告、ワクワクしますよね。ポスターを眺めるのも楽しい。きっとこの映画はこんな物語なのだろう、こんな展開が待っているのだろう、そんな予測を胸にスクリーンに足を踏み入れるあの瞬間の高揚感といったら他にありません。

自らの予想が当たったときの楽しさもありますが、やはりそれよりも大きく裏切られる方が遥かにワクワクしてしまうのは是非のないサガというやつかと思います。ただその裏切りが必ずしもいい方向に転がるとは限らないのですが……。

 

映画「エディントンへようこそ」の感想です。

簡単あらすじ

2020年、コロナウイルスの流行に呑まれようとする町エディントン。ロックダウンの閉塞的な雰囲気が漂う中、保安官のジョーはマスクの着用を巡って現市長とのテッドと言い争いをし、その結果勢いで市長選への立候補を表明する。理解しがたい独断行動により妻と険悪になり苦悩するジョー。その上SNSによる誤った情報の拡散により事態は町全体を巻き込んだ滅茶苦茶な方向へ転がっていき……。

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★(星3)

※一部暴力描写があります。申し訳程度の性? 描写もあり。

ネタバレなし感想

 

■アリ・アスター監督の手腕

色々な意味でネタバレなしに語るのが難しい作品ではあるのですが……ひとつ大きく印象に残った点として、どの画面も非常に考えられて構成されているように思いました。

といいますのも、映像における飽きが来ないんですよね。この映画は、刺激的というか衝撃的な場面が多い映画ではあるのですが、会話劇の場面もそこそこ存在しています。なので撮り方によっては観ていて退屈な画面になる場合も十二分にあるかと思うのですが、そういう気持ちになることはありませんでした。ここはさすがのアリ・アスター監督。人間にフォーカスを当てた場面も、ある意味もう一つの主役である町に焦点を当てた場面もバッチリ映えていました。

私はアリ・アスター監督作品ではかの有名な「ミッドサマー」を鑑賞しているのですが、そういう意味でホラーのような雰囲気が出るカットがいくつかあったのが少し嬉しかったです。急に暗闇に人影がぼわっと現れる、みたいな。いえ、ミッドサマーにそんなホラー演出はないのですけれど……(ほぼ常に画面が明るい作品なので)。

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画「エディントンへようこそ」のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

要素ドカ盛りトッピングマシマシ

この映画を一言で表すならば、秩序なきフルコースでしょうか……。

ロックダウンの町を舞台に巻き起こるドラマという情報は予告から知っていたのですが、思ったより要素が多くて驚きました。マスクの着用義務についての話や、そもそもコロナウイルスが存在するのか否かという話題、ひいては陰謀論云々も定番として出るだろうことはなんとなく想像がつきました。が、選挙戦から黒人差別やKKKにデモ、事情有りげな若奥様にカルト宗教、町と町の境で起きた事件故の担当面倒だね系話に緊急参戦する銃乱射テロリストたち――なんですかこれは。

正直理解が追いついたのは序盤だけで、そこからはジョーの暴走と共に事態が理由のわからない方向に。そもそも急に市長に立候補するなんて、家族の困惑も当然です。それらによるデモ活動やフェイクニュースの拡散によって混沌が更に混迷を極めます。まだジョーの気持ちをギリギリ汲めなくもないかくらいの気持ちが少しはありましたが、挙げ句奥さんをダシにテッドを下げようとします。最悪です。わけわかりません。とても公言していいとは思えない、身内とはいえ他人のプライベートな内容を選挙戦に使うってどういうことですか? が、当の奥さんから否定の話がSNSで公開され……追い詰められたジョーはついにとんでもない行動に。

殺しです。市長殺し。殺人です。しかもそれを、黒人への差別意識を利用して同僚(急な市長選の手伝いをしてくれた恩人!)に罪を擦り付けようとします。もうわけがわかりません。何が彼をそこまで駆り立てるんですか。そんなに市長になりたいのか? バレそうになれば立場を利用して有耶無耶にしようとするし、ただひたすらに頭を抱えながらもジョーの凶行を眺めるしかできませんでした。

なのでラストの結末を観ても、そらそうでしょうという気持ちにしかならず。お似合いの結末と言いたいところですが、罪は償ってほしかった気持ちはある。あの状況こそが何よりの罪だろうといわれればそのとおりではあります。もう高らかに自分の正しさを主張できるジョーはいなくなりましたからね。

 

前提知識があろうとなかろうと

鑑賞してほどなくしてから、これはしまったかもしれない、と嫌な予感がしたんですよ。いわゆる事前に知識が必要な映画だったのかもと。私は世界史に詳しくありませんし、それこそKKKなる白人至上主義団体を知ったのも本年鑑賞した映画「罪人たち」からという、差別の歴史超絶初心者(?)。これはアメリカの歴史に多少なりとも詳しくないと面白く鑑賞できない系の映画なのではないかと。

ただ実際そうだったのかと言われると怪しくて……というのも、たとえ知っていたとしても、今の私のようにこの映画は「結局何が言いたかったんだろう?」「何を表現したかったんだろう?」がピンと来ないまま終わったんじゃないかなと。

もちろん映像に面白みはありますし、役者陣の演技もいいと思います。ですが、この映画鑑賞後の私は困惑と混乱と主人公の無秩序暴走っぷりしか頭に残りませんでした。なのでもしかしなくても、この映画の出来事の全てに意味があるわけではなくて、そういうものである、ただそれだけなのかなと……。

別に今更、周囲の目を気にせず大暴走するのはよくないよ! なんて教訓喧伝するのもヘンですしね。この作品は不条理ヒトコワみたいなものなのやもしれません。それにしては疑問の湧き方が凄かったですが。悪夢か?

鑑賞後、首をひねるしかなかった私は映画パンフレットを購入し、なにか解釈のヒントがないかを探ったのですが……特に納得の行く考えは現在までまとまりませんでした。やっぱこの映画って不条理ヒトコワホラーってことでいいんですかね。

ラストのヘルパーの男性が服脱いで、母親の寝ているベッド(もちろんジョーも寝ている)に入ってくるの流石に怖すぎましたもんね。怖いよ。全身不随になったジョーが全裸で映っているのもだいぶ怖かったですけど。

言葉どころか、自らの何もかもを隠すこともできなくなってしまったのか。

 

 

映画「エディントンへようこそ」の感想でした。

……言うほど歓迎されてなかった気もする!

 

アリ・アスター監督作品で非常に有名な「ヘレディタリー/継承」、まだ未鑑賞なのでそろそろ履修したいですね。確かYoutubeで無料配信されていたかと思うのですが、せっかくですので映画館で鑑賞したい。どこかで再上映されたりしませんかね。今作もそうですが音響へのこだわりを感じるため、やはり映画館が最高です。何卒何卒。

 

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