チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】HELP 復讐島(ネタバレ有)_怪物のいる島

皆さん、復讐モノはお好きですか?

私は……実は結構難しくてですね。このジャンルにおいて、面白い作品も数多くあることは理解しております。ですが復讐は何も産まない! ……まで言うつもりはございませんが、やり過ぎるとなんだか観ていて辛くなってしまうといいますか。復讐に囚われたキャラクターを目にしているのが苦しくなってくる場合もございます。

本作は、そんな私の懸念を明後日の方向にぶっ飛ばす怪作でございました。

映画『HELP 復讐島』の感想です。

簡単あらすじ

コンサル会社で働くベテランの社員・リンダ。彼女は非常に優秀な反面、周囲に馴染めておらず、仕事も横取りされ苦労ばかり。しかし社長が代替わりすることをきっかけに昇進のチャンスが訪れるはずだったのだが、新社長のブラッドリーはリンダの能力を理解しない。実力で見返そうとブラッドリーの仕事に同行し、飛行機で取引先に向かうことに。ところが道中で飛行機が墜落し、リンダは無人島で目覚める。程なくして、ブラッドリーも無人島に流されていることに気づくのだった……。

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★★(星4)
※暴力描写、微スプラッター描写あり、ジャンプスケア風演出もあり

 

ネタバレなし感想

■なかなか想像できない方向に話が転がる

自分の能力を理解しない上に、だいぶ気分屋で自分勝手な上司と無人島で二人きりになり、しかもアドバンテージは自分にある……という状況で、果たして主人公が何をするのかというのが本作のキモにあたります。

ですが、予告の段階でなんとなく想像がつく印象がございませんか。例えばですけど、上司に自分を認めさせるために状況を整えてやろうとか、あるいは上司を暴力的に痛めつけて復讐してやろうとか……いくつか想像をして鑑賞に臨むわけです。

鑑賞後、私としましては「こういう方向なのか!」と驚きました。オチが大どんでん返しで! とか、超絶予想外! とかそういう方向性の物語ではないとは思うのですが、とにかくキャラ設定が秀逸でしたね。かなり好きでした。ここまでされちゃあ、私からは何も申し上げることはございません、と言いますか。

ただ好みは分かれると思います。結構暴力描写やグロ描写がスプラッター系というか、必要以上に血をドバドバさせたりとか、痛いな~と思わせる部分があるとか……。

 

■音響がイイ!

かなり良かったです! 効果音も劇伴もよくて、聞いていて気持ちが良かった印象です。アクションシーン(?)らしきものもございますし、迫力重視の場面もございます。無人島の探索要素もあり、そのあたりの没入感に一役買っていた印象です。

劇場で観る価値、大いにアリ。私はそう感じました。

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画『HELP 復讐島』のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

君たちはリンダを好きになれるか

ここまでされたら私はもういっそ好きでしたけどねェ! 一周回って!

本作のミソは、主人公のリンダが別にめちゃくちゃ不憫で可哀想! というキャラ付けではないところでございます。会社で仕事ができるのは確かなのですが、コミュニケーション能力と協調性に難あり。色々なムーブが痛々しくて見ていられません。おそらく友人もいないと思われます。

ブラッドリーの言い方はさすがにひどいものの、リンダが副社長の器かどうかはかなり怪しいところです。実務のできるベテランよりも、人間関係の構築が上手な新人のほうが好かれる傾向、多少なりともどの業界にもございませんか? 弊社にもかつておりましたね。社長に人柄を好かれ入社したにも関わらず、できると豪語していた仕事が一切できないというロック過ぎる社員さんが……。
さすがにこれは極端な例えですが、リンダの仕事を横取りしていた若手社員は(横取りという最悪行為を行っている時点でひどいのですが)人付き合いはうまそうでしたし、彼のようなタイプのほうが副社長に向いているというのは事実なのでしょう。コンサル会社ですし、話術がものを言いそう。リンダは補助のスーパーエリートとしての道を歩めればよかったのですが……おそらく、リンダは環境選びがあまり上手ではなかったのでしょう。悲しいことに、努力家がすべての世界で報われるわけではないのです。

というかリンダはあの会社に所属する器ではそもそもなかったのです。むしろ、会社が、彼女にとっては小さすぎたのかもしれない。逆によく彼女をあの会社に抑え込んでいたなレベル。そのことが無人島生活において明らかになり、挙げ句覚醒します。趣味の延長でしかないと思われていたサバイバルスキルをいかんなく発揮しまくるのです。あの状況下であのテンションを保てるリンダは間違いなく天才のそれでしょう。まあ彼女に余裕がある大きな理由は他にもありましたが……一旦置いておいて。

リンダの無人島における圧倒的アドバンテージが彼女に自信をつけてしまった。そして、彼女は怪物になってしまいました。元々環境――元夫のエピソードや、それこそ会社での諸々など――が彼女を怪物たらしめかねない追い詰め方をしていましたが、それでも今まで彼女はギリギリマトモであろうと耐え続けていたのだと思います。夫の話については、リンダが直接手を下したわけでは……まあ……ないですからね。

 

リンダは少しずつ、少しずつ怪物として成長してしまった。
最初は泥酔夫に隠していた車の鍵を渡してしまったことに始まり、飛行機事故の最中リンダを殺してでも助かろうとする若手の社員の手をカトラリーで刺す(これはおそらく正当防衛……のはず)、そしてブラッドリーを捜しに着たガイドとフィアンセを危険な足場に誘い込み、事故死に見せかけて故意に殺害する(ガイドに関しては確実に殺意を持って殴打している)。最後はブラッドリーの頭をナイスショット。少しずつ、人を死に向かわせる方向性が直接的になっている! 怖い!! どんどん吹っ切れている! あとどんどん美人になっている気もする!! 生き生きしとる!! そういうたぐいの怪物か!?

ここまでされたら……好きになっちゃいますよね……逆に。いっそ。応援するまではいかなくとも、どこまで行くのか見てみたいぜ的な気持ちになってしまいました。出てくるキャラ皆だいたいどこかおかしいのだものな。

登場人物に感情移入して観るタイプの映画では全然ないので楽しかったですね。

 

それはそれとして、リンダは結構絆されやすいところがある。
おそらく今までの人生であまり人に優しくされてこなかったのかもしれません。そのたびに、自分は自分のままでいい、自分が頑張れば大丈夫だと、必死に言い聞かせて立ち上がってきた。だからこそ、ブラッドリーのでたらめなその場しのぎの好意に一度ならず二度、下手したら三度くらいは騙されている気がします。

それが、ちょっとだけ、悲しかった。どれだけ仕事ができても、どれだけ優秀でも、人付き合いに何らかの引っかかりがあるだけで何もかも上手く行かなくなってしまうのかなと。ここはいたたまれなかったです。だから本当のスウィーティーちゃん(鳥)と一緒に末永く暮らせよ! スウィーティーちゃん(鳥)生きててよかった!!

 

ブラッドリーは爪が甘い

その甘さが結局“スウィーティー”なんだよね。

リンダの敵であり(※パワハラ描写は尺の都合で控えめなので言うほど“クソ上司”感は強くないです)、共に生き残る存在であり、相棒のようにもなっていく、奇妙な関係性を築くことになるブラッドリーがまたイイキャラしている。ここの関係性もだいぶ見どころですね。これどうなっちゃうんだ!? が点在している。面白い。

ブラッドリー、今までおそらく何の苦労もなく生きてきたからか、割とアホです

状況は間違いなくリンダが掌握しているのに、常にそれに抗おうと試みる。ダメだと一回諦めたかと思いきや時間を経てまた頑張ろうとする。まあこれが随分可愛らしいことで(皮肉)。そりゃあリンダもうっかりスウィーティーって呼んじゃいますよ。実際はうっかりどころか本当にそう思ってたという展開ですけども。怖。まあ状況が状況で仕方がないのかな~という気持ちと、そもそもリンダはそこら辺がぶっ壊れている子なのでより仕方ないか~という気持ち。

イキリ散らかしていた方が主導権を奪われて、支配されて弱ってしまって、そんなひとってとっても可愛いという説がございますからね。もっと的確に言えば、可哀い、ですからね。

ただそんな彼でも人を見る目はあったようで、フィアンセが本当に良い方だった……捜査を打ち切られてでも独自に捜し続けているというのは凄い。問題はもうちょっと大勢で来なかったという爪の甘さですかね。まさかブラッドリーの部下が最強サバイバル王(危険思想持ち)に進化してるとは思ってないだろうしな。夫婦揃って爪が甘いね!

 

一応、それなりに趣味は悪い

この映画は、基本的にはヤバいヤツにはヤバいヤツをぶつけようぜ!!! という作品なので、そこそこ悪趣味映画ではございます。最後の方のキャットファイト(?)はそれの極地と言いますか……楽しめるかどうかは人を選びそうな印象。

結局リンダがリンダなのもあって、いわゆるスカッと系ではないと感じました。ブラッドリーを応援する人もそこそこいそう。

リンダとブラッドリーの関係性がよい感じのタイミングであった、“怪物”に関する会話は印象的でしたね。ブラッドリーが自身を怪物だと称して家庭環境の不備を口にし、それをリンダが「あなたのせいではない」と返す。あれ、なんとなく観てましたけど考えてみたらリンダも環境のせいで怪物になってしまった側なんだよな……。

ブラッドリーを始めとする色々な人のせいで、リンダはすっかり怪物になってしまったんですね~。ある意味我々はモンスター誕生を見届けたわけです。うわあ! 趣味ィ! 誰がここまでやれと言った!

とはいえ基本的にはB級映画のノリです。楽しめ! 怪物誕生を!!

 

 

映画『HELP 復讐島』の感想でした。

そういえば映画冒頭で、久しぶりに20世紀スタジオの表記を観ました。あれ、妙にわくわくしてしまうのはなんででしょうね。
最近色々映画を観てきたこともあって、提供会社のロゴムービーというのですか? あれのイントロクイズができるようになってきました。SONYのOの真ん中にカメラがシューされた場合はコロンビアで、Oの右側の円縁に突進していった場合はSONY PICTURESみたいなそういう……

……有効範囲が狭すぎる! 周囲の誰に話しても「そうそう」ってならなさそう!! こんな話を誰に振ったって冷ややかな対応されるに決まってますよ冒頭のリンダのように! 私も島流しされれば覚醒できますかね……早々に干からびて終わりかな……。

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