チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】しあわせな選択(ネタバレ有)_自分には、これしかないのだから

皆さんは、転職をしたことはございますか?

私はございません。社会人になってもうすぐ9年ほどになりますが、今の職場・職業一筋でやらせていただいております。正直しんどい場面もございますが、世間でよく聞く転職ブームの波に乗る体力は今のところはございません。もちろん今のところは、でございますが。労働は苦しみ。自らの無力さの具現化(自業自得)。

もしも、生活のために自分の経験や経歴を捨てた方がいいのだと分かっていたとして、はいそうですかと言えるかどうか……本作はそれが言えない主人公の物語でございました。

 

映画『しあわせな選択』の感想です。

簡単あらすじ

美しい妻、娘と子供、可愛らしい犬二匹とともに、立派な自宅の庭で休日にバーベキューを楽しむ男マンス。「全てを叶えた」と満足げな彼だったが、突如会社の一部自動化により25年間務めた製紙工場を解雇されてしまう。再就職を試みるマンスだったが、就活はうまくいかない。追い詰められた彼は、妻のつぶやきをきっかけにある行動に出る――

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★(星3)
※微・性描写があります

 

ネタバレなし感想

■堅実に、少しずつ狂気へ

本作の主人公マンスは人間くさい男です。25年同じ会社に努めてきた真面目な男なのですよね。なので彼がやろうとする色々なことが全体的に人間味があります。これがぶっ飛んだサイコパス男だとか、考えが理解できないほどハチャメチャなキャラであったら本作は成り立たないのです。

マンスが普通であるからこそ、本作は成り立っている。この味わいはある意味地味ではあるので好みが分かれそうです。いわゆるスリラーしすぎていない作品です。いえ、もちろん方向性としてはしっかりスリラーではあるのですが、いかんせん丁寧というか丁寧すぎるというか。ちょっと間延びしている印象が気になりました。

 

■カメラの構図と色彩の繊細さ

画になるカメラ構図と、場面による色彩の使い方が印象的でした。構図に関しては物越しの撮り方が結構特徴的だったように思います。何かに閉じ込められているような、自分から閉じこもっているような、一つの考えに囚われている哀れな男を切り取っているというか。

色彩もきれいなところはすっごくきれいで、地味なところは凄まじく地味。色合いが状況や登場人物の心情に合致しているのかなと。冒頭の映像すごい綺麗ですよね、作り物みたいに。作り物ではなかったはずなのにこんなに簡単に崩れてしまうものか。

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画『しあわせな選択』のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

他に選択はなかったんだ!

本当に他に選択はなかったのか?
no other choiceじゃないんですよ
(サブタイ。原題がこのサブタイに近い)。

本作は一応コメディ作品? らしいので、一定のリアリティがありながらも結局荒唐無稽です。存在するライバルを物理的に蹴落として、結果自らは見事に新たな職を得るという話。普通だったらバレるだろみたいな殺害方法を選んでおきながら警察はマンスを捕まえることができません。もちろん、マンス自身も若干の妥協はできるくらいには成長をしたのですが……成長するために3人犠牲が出ていたのではなあ……。

マンスは普通の男なので殺人に躊躇します。というかむしろターゲットの方に感情移入してしまって迷ったり戸惑ったりためらったりするのですよね。1人目に浮気現場を目撃させないよう奮闘する場面はだいぶカオスで好きでした。2人目にも人生相談的なことをうっかりしてしまいますし、3人目はもはや殺害しなくても再就職できそうな流れもあった。
けれど、マンスは殺害という選択を取ります。3人目の殺害理由は前の2人が犬死にだから。ま、真面目……! 真面目に倫理観が終わっている!

人間味がありますよね。こんなイヤな人間味があってたまるか。

 

罪をともに背負う

夫のしたことを知りながら、奥さんは何も言わなかった。これで共犯。

ラストの場面は印象的ですね。再び全員揃った家族。娘の奏でる演奏が響く家。冒頭と似たシチュエーションなのに、天気は雨で色彩も明るくないし、どことなくこの先の不穏さが示唆される。娘もどうやら樹の下に埋まっている者の正体に気づいているようですし。けれど娘は素晴らしい演奏を披露してくれて、マンスも再就職に成功して、だからこれはマンスの勝ち取った結末なのでしょう。その職場に人間は一人もいませんが……。

奥さんも大した愛情の持ち主ですよね。これを愛といっていいのかは若干迷いますが、多分愛。

 

 

映画『しあわせな選択』の感想でした。

冒頭で、一つの職業でやらせていただいているという話をさせていただきましたが、私は今の仕事に凄まじい自信があるわけではなく、たとえ辞めることになったとしてもそんなに未練はございません。一から始めるというのは大変ではございますが、何事も面白くはございますからね。

なのでこの主人公のように「自分にはコレだけしかない」と思えるのはある意味少し羨ましいように思いました。趣味ではなく、仕事でそう思える何かが見つかればいいのだけれど……まだまだ私はひよっこのようでございます。

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