チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】プシュパ 覚醒(ネタバレ有)_スカしたアウトローでも恋愛ではポンコツ

インド映画大好き!

私にとっての初・インド映画体験は昨年。村のため武器の密売に手を染めていた者がその過ちに気づき、密売人を皆殺しにする戦鬼となった男の物語を描く「デーヴァラ」でございました。圧倒的スケールとアクション、優れた楽曲に心躍ったものです。「デーヴァラ」ですら面白かったのに、そこから程なくして鑑賞した、言わずとしれた大名作「RRR」(Dolby cinema環境でのリバイバル上映!)に見事に刺されてしまい、現在に至るまで私にとってのベストオブインド映画の地位を不動のものとしています。

そんな「RRR」を越え、インド映画トップの興行を叩き出したとの触れ込みで登場した「プシュパ 君臨」。興味が湧かないはずはございません。早速鑑賞を試みたところ、なんと前作が存在するようでして、ならばまずはPart1から参りましょう! リバイバル上映文化に感謝を捧げます。

 

映画「プシュパ 覚醒」の感想です。

簡単あらすじ

雇い主にも取引先にも引き下がらない傍若無人さを持つ労働者の男・プシュパ。そんな彼の豪胆さに魅入られた若者ケーシャヴァは、プシュパに付き従うことに。ある時稼げる仕事として、二人は希少な木材・紅木の密輸作戦に参加。しかし警察に見つかりかけ窮地に陥るが、プシュパが機転を利かせ難を逃れる。このことをきっかけに、プシュパは紅木の密売人として徐々に名を挙げていくことになる――

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★★(星4)
※ちょっぴりアダルティな雰囲気があります

 

ネタバレなし感想

■個人的・インド映画史上ダントツの独特なキャラ付け

本作で私が最も驚き、そして困惑した部分は登場人物たちのキャラ付けでした。

主人公のプシュパは超絶傍若無人でいつだって偉そう。誰かに対して頭を下げるなんてとんでもない。誰より自分が一番優れていると考える、言葉を選ばず言えばかなりスカした男という印象でございます。しかも犯罪者だし。もちろんこうなった理由はあるにはあるのですが、そのことに思い至る暇もなく気に食わないことや思い通りにならないことにひたすら楯突き続けるものですから、見ていてコイツ応援してええんか……? の気持ちが拭えないという新しいインド映画体験を余儀なくされました。

プシュパを兄貴と慕うケーシャヴァの存在があったからこそコミカルな雰囲気だったりお茶目さが引き出されたりしていたため一応は見ていられたのですが、結構好みの分かれる独特なキャラをしていると感じます。誰しもに好かれるタイプのキャラクターではない。なんというか……やれやれ系主人公? あるいは一時流行ったタイプのなろう系*1主人公?

そして独特なキャラをしているのは彼だけではありません。ヒロインのスリヴァッリです。彼女もまたかなりスゴいキャラになっていて……詳細はネタバレ話にて。彼女も相当好み割れそうですが、私は結構好きなキャラクターでした。

 

ただ、登場人物が多い割に強烈なキャラクターが一箇所(主にメインキャラ側)に固まっているせいで人の顔と名前を一致させるのが結構大変でした。組織モノはどうしても人の顔を覚えるのが追いつきません……。というか若干一致していないです。それでも楽しめたのでよいのですが。

 

■スローと早回しの繰り返しアクション

そんなに多用していいんだ!? と思わされるほど、本作のアクションはスローと早回しを使いまくります。止め絵の美しさと流動感のある素早さとでメリハリがついてはいるのですがだいぶ過剰気味。ここもかなり好みが割れそう。個人的には少々しつこさを感じました。

本作、全体的に「好みが割れそう」という感想に尽きるのですよね。もちろん楽しめる下地はありますし、物語も意外性より王道を突き詰めたような方向性なので、あまり難しく考えずに観ていられるのはそうなのですが……それでも好みは割れそう。

 

■禁 煙

左下の禁煙表示が気になりすぎる。

プシュパ、作中でよくタバコを吸うのですが、プシュパに限らず誰かがタバコを吸うたびに画面の左下に禁煙マークと何やら警告文が書かれた細長~い表記が表示されるので笑ってしまいました。ほんの一瞬の喫煙でも絶対に出てくる。煙だけの時ですら出ていた気がする。そんなに重要なんだ!?

現地では映画館でタバコを吸う人が続出してしまったのでしょうか……。

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画「プシュパ 覚醒」のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

欠点があれば愛せるとはいえさすがに……あれ!?

ヒロインのKissを5000ルピーで買うアウトロー主人公は許されるんですかね?

今の価値だと5000ルピーは9000円くらいみたいです。
インド人の平均年収が30万円程度とのことで、ひとつきのお給料は25000円。ざっくりではありますが月給の三分の一を使ってヒロインとのキスを勝ち取ろうとするプシュパ、さすがに情けないとは思わないのですか?(元々の始まりはケーシャヴァが1000ルピーでスリヴァッリの視線と笑顔を買おうとしたことではあるのですが)

怖いものなしのプシュパですが、上記のようなエピソードから伺えるレベルで恋愛はよわよわ。ケーシャヴァの方がよほど道理をわかっている始末です。自分のことをスリヴァッリが見てくれているかどうかが気になって気になって仕方がない。うぶな男子高校生? 

完璧超人めいたキャラが実は恋愛に奥手というギャップ自体はいいのですが、そこからお金で人の好意を買おうとするから親しみが湧かない。しかもそのままプシュパの家柄(非公式)を引き合いに結婚式まで開催しちゃう始末。やめなよ! どうするんだよこれ好感度どうしても地に落ちるよ!? スリヴァッリはずっと嫌そうだし! 全然プシュパに興味なさそうだし! ここも本作のユニークポイントですね。結構ヒロインと心を通わせる主人公が多いので。

 

……と思っていたら、スリヴァッリの父親が(なし崩し的に)警察に情報を流していたことで、プシュパの商売パートナーであるマフィア三兄弟の一人・ジャーリに拉致されてしまいます。その上、スリヴァッリに父の命を救いたいなら一夜をともにしろと要求。しかしスリヴァッリが向かったのはプシュパの家で……なんとスリヴァッリがドのつく超絶ツンデレでプシュパのことが本当は大好きでした!! ということが明らかに。スリヴァッリに体を差し出す前に本当に愛する人と結ばれたいと申し出て来たのです。あまりの展開にプシュパすら最初は助けてほしいからそう言っているだけだと疑っていましたが紛れもない本心。結果プシュパはジャーリをボッコボコにし、二人は晴れて結ばれるのでした――

そ……そうくる!? そんなのあり!??! 強烈なヒロイン過ぎませんか!?

ジャーリボッコボコafter、プシュパはスリヴァッリを家まで送り届け、彼女の気持ちを尊重してそのまま去ろうとするんです。プシュパ的には、スリヴァッリがもし父親のために嘘をついていたとしても構わないということなのでしょう。あるいは彼女の気持ちが本当なのかどうか怖かったのかもしれませんね。そんなプシュパにスリヴァッリは猛烈kiss…でそのままダンスシーンに突入! 一昔前のラノベか!? そのダンスもダンスでなんというか情熱的な愛のダンスと言いますか……露骨!

 

本作、脚本の方向性的に「こうだと思ってたでしょ? 実はこうでした!」が多い気がします。なので伏線回収であったり意外性だったりは物語展開にはあまりなく、とにかくキャラの独自性にポイントを振っている。ライブ感がすごい。

スリヴァッリ、ここからツンデレ属性も継続で持ちつつプシュパに必要以上に触れられる(別に言うほど過激でもない程度で)と“その気”になるとかいう属性まで増えてしまいますからね。凄いよ。そんな設定やっていいんだ。

 

連載漫画みたいな構成

本作、漫画っぽいなと感じました。オムニバスエピソードまでは行きませんが、結構展開がぶつ切りと言いますか。問題1を解決したぜ! 問題2のことは次回に続く! みたいなノリで物語が進行する印象があります。

なので、割とどこで打ち切りになってもどこで引き伸ばし展開に遭ってもなんとかなる感じの構成です。そのせいでプシュパ成り上がり成功やったね! となった直後に実は2のボスキャラにあたるシェーカーワト警視がめちゃくちゃ雑にぽっと出し、ざっくりバトって終わるという。独特。

プシュパ、全体的にスカッと〇〇みたいな風合いがある気がいたしますね。成り上がりものなので仕方がない部分ではありますが。なろう系感があるのはそういうことなのやもしれません。まさか、日本リスペクトなのか……? 冒頭にPS2初期並の謎CGで日本の話が出てくるのもそういうことなのか……?(なんだったんだろうあれ)

 

 

映画「プシュパ 覚醒」の感想でした。

とにかくユニークな作品なので、刺さる人には刺さるということなのかも。
物語の完成度という意味合いではどうしても「RRR」や「デーヴァラ」に軍配が上がってしまうというのが個人的な総評となりますね。でも確かにプシュパからしか得られない栄養がある気がします。正直ヒロインはかなり好きですし、ケーシャヴァはもっと好き。プシュパのことは現時点ではそんなに好きになれず、そんな不安を持ち合わせたまま……2の感想に続きます!

 

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eiga.com

*1:小説投稿サイト「小説家になろう」初出の、一世を風靡(?)したジャンルのようなもの。転生してチート能力を手に入れファンタジー世界で主人公が無双する作品が下地になっており、作品によって様々な味付けがされている。なろう系そのものが揶揄の対象になっていた時期もあり、ジャンル自体を忌避する人も少なくはない