チネローテル 映画感想ブログ

映画館で観た映画の感想を書くブログ

【映画感想】レクイエム・フォー・ドリーム(ネタバレ有)_激甘ふわふわクリーム土台の上に家を建てようとするな

皆さんは、薬物乱用系の映画、お好きですか?
……すみません、自分で言っておいてなんですが、「薬物乱用系の映画」嫌な響き過ぎますね。

薬物が映画の重要なテーマとして出てくる作品は今までに鑑賞したものでもいくつかございました。『ナイトフラワー』『YADANG/ヤダン』など。一応『ボディビルダー』もそうかもしれません(ステロイド)。『アウトローズ』でも要素としては出ていましたし、結構使われがちな存在ではあるのですよね、薬物。どうしてそんなに身近なんだ、薬物……。お陰で薬物使った時の後遺症などに少しだけ詳しくなってしまった。嘘も含まれているのかな~と調べても、ちゃんと実際の現象に基づいて扱われている作品が多いので。検証がしっかりしていますね。リアリティのためには大事なことですが、怖~。

ですが今作は薬物がテーマと言うよりは、薬物乱用そのものが映画になっているといいますか。かなり強烈な作品でございました。
私は映画の自由さを愛しています。でも現実での薬物乱用はダメ、ゼッタイ!

 

映画『レクイエム・フォー・ドリーム』の感想です。

簡単あらすじ

ニューヨークの若者ハリーは友人のタイロンや恋人のマリオンと薬でハイになるのが日々の楽しみ。ハリーの母のサラはテレビ番組を観ることだけが日々の楽しみだった。ハリーはマリオンとの未来を思い描き、タイロンと共に麻薬売買に手を出す。一方サラのもとには、テレビ番組に出演が決まったとの連絡が。番組の出演時に、思い出の赤いドレスを着たいサラは“ダイエット薬”に手を出してしまう……。

※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※

Filmarks短評

評価:★★★★(星4)
※性描写と薬物乱用描写あり

 

ネタバレなし感想

■ダイジェスト・薬物乱用

キュ! ポンポン! ボコボコ スィー ブクブク ハァー

本作の薬物乱用描写はとってもおしゃれ! テンポよく場面が変わり、妙にハマった効果音が流れて、次のカットではすっかりトリップした主人公たちの姿が!

実際は腕にゴムのホース(駆血帯と呼ばれるもの。)を巻いて血管をよく見えるようにして、静脈に注射をブッスー刺しまして……という経緯があるわけですが、本作薬物乱用描写が非常に多いためインスタント・ダイジェスト薬物乱用演出が使用されています。それが妙に気持ちの良い音がするのですよね。劇場公開にぴったり!

薬物を乱用すると瞳孔が散大すると聞いたことはありましたが、こういう……こういうことなのですね。。ずっと怖しか言えないbotになってしまいました。お手軽感の演出がより怖すぎます。おしゃれなのも嫌だ。MDMAなどの合成麻薬が、見た目がどこか可愛らしい・オシャレな印象があるのに嫌悪感が出るのと似たような感じです。つまりはいい作品ということではあるのですが。

 

■想定される不幸、全部やる

本作は、基本的に登場人物らのほぼ自業自得です!

なので、過ちを犯したものには罰を。容赦など不要でございます。と言わんばかりに一旦頂点まで達した状況は一気に急転直下でございます。ただ自業自得なので、観ていて辛過ぎる、心が苦しい! とはあまり思えませんでした。そもそもタイトルが夢のための鎮魂歌ですからね。夢が……死んでる……。

ただ、サラに関しては少々心が痛む部分はございました。彼女に関しては完全な自業自得とは言い切れませんゆえ例外です。ダイエット薬、怖い! 
この映画では(そもそも今作においては、ダイエット薬と定義していいのか怪しいアイテム)露骨に悪質な存在として描かれていますが、現実にも存在していますものね。もちろん用法用量を守って正しく使えば問題はないのでしょうが、何であろうと、乱用は良くないということでございます。

 

■『サブスタンス』との関連性

ボディホラー映画として一世を風靡した、個人的にも大傑作と思っている作品『サブスタンス』ですが、この映画でも薬物乱用が主題のひとつになっています。もっと『世にも奇妙な物語』みたいな、SF(すこしふしぎ)風味のある一本ではございますがね。

『サブスタンス』と本作は、演出や方向性に近いものがあるのではないか、との話を事前に友人から聞いていたためそこも頭に入れて鑑賞したのですが、確かにそうかもと思わされる部分がございました。前述のダイジェスト・薬物乱用演出であったり、サラの立ち位置と、『サブスタンス』主人公・エリザベスの立ち位置の類似であったりなど。考えてみたらエリザベスもサラよろしく赤いドレスで出かけようとする場面がございましたね……。

ほぼ確実に本作を意識して『サブスタンス』が作られているのだと感じました。アツいオマージュがある気がいたします。あらためて『サブスタンス』を見直すことで発見がありそうです。個人的には『サブスタンス』は結構鑑賞するのが辛かったので、もう一度見直すのは少々勇気が必要ですが……。

 

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画『レクイエム・フォー・ドリーム』のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

カタギの仕事(大嘘)

麻薬取引で一生楽しく暮らせるわけがないでございませんか。

ハリーとタイロン、そしてマリオンが思ったよりも未来のことをマトモに考えられない性格で驚きました。麻薬取引で日銭を稼いで物事をうまくやっていこうとしてるって正気ですか? いずれ足を洗おうという意思は感じましたが、麻薬のかさ増しで稼ごうとしている時点でだいぶ危うい橋を渡っている。バレたらボコされてしまうでございますよ。

もしかしたら三人とも薬物乱用で脳が萎縮してしまっている状態なのかも。マリオンに関しては、カウンセリングを辞めたことが両親にバレるという台詞がありましたので元から何らかの問題を抱えていたかもしれません。両親に対して反抗的なだけという可能性もありますが。
あるいは、苦労せず簡単にお金が手に入ってしまう経験で脳の報酬系がおかしくなっているとか。少なくとも中盤以降の薬物がなくてどうにか調達しようとする彼らの行動については、報酬系がどうかなってしまっているとしか思えません。

ただ彼らがこうなってしまった経緯は描かれていないので、完全に突き放した気持ちで観られるかと思うと少し考えさせられてしまうところではあります。ハリーは父親もいないし、タイロンも母親のことを思い出しては家族を大事にしたいと思っているような描写があります。とはいえ明示はされませんので想像するしかございませんが。

でも薬物に手を出しているし売り払っている時点で同情の余地は、なし!

 

全盛期への執着

サラは、自分にとって何よりもきらきらしたモノである「テレビ番組」に出演するチャンスを得ます。これが破滅の始まりでございました。
かつて夫が健在だった頃に身に着けた赤いドレスは、彼女にとって全盛期の象徴なのでしょう。それを身に着けて、再びきらきらしたあの時代を取り戻せたら……。今は夫も亡くなり、息子との仲はあまり良好ではなく家に帰ってきません(裏ではジャンキーになっているし)。だからこそ彼女にとって赤いドレスは希望そのものだった。
しかし年月は人間の肉体を変えてしまいます。果たして何年前のものなのか、そのドレスは現在のサラではとても着られるサイズではありませんでした。買い換えたりサイズを変えたりすれば良い話なのに彼女がそうしなかったのは、やはり昔の自分に戻りたいという気持ちが強かったからなのか。そうすれば成功者として堂々とテレビに出演できると思ったのでしょう。

彼女は極端なダイエット*1に失敗し、つい友人が勧めてくれたダイエット薬に頼ってしまいます。てっきりサプリメントの延長線上にあるものなのかなと思ったのですが、ハリーの見立てによればなんと処方されていたのは覚醒剤! いや……えぇ……確かに覚醒剤には食欲を抑える効果があると聞きますが、ヤブ医者にもほどがございませんか!? 歯ぎしりで母親がジャンキーになっているのを知るの、嫌な進研ゼミ過ぎる。自分も経験あったところだ! じゃないんですよ。この後落ち込むハリーが薬に頼って感情を無にする場面があまりにもグロテスクすぎて変な笑いが出ました。逃げ癖だ。

サラは自らが出演するテレビ番組の続報を待ち続ける。バッドの妄想に取りつかれながらも耐え続ける。ここの冷蔵庫が襲ってくる場面超好きです。冷蔵庫に襲われてみたい人たちは是非ご覧ください。名場面でございます。

けれど待てども待てどもテレビ局からの連絡は来ない。でもこれは薬のせいで時間が妙に引き伸ばされている可能性もあるので、余計に長く思えたのかもしれませんが。結局、テレビ番組に出られるかどうかが本当だったのか最後までよくわからないのが嫌過ぎる。ただのいたずら電話だったのか、それとも本当に出演オファーがあったのか。いたずら電話であれば高齢者への詐欺電話のような印象があって嫌ですし人の気持ちを弄ぶのも悪質すぎます。本当だったのなら……いたたまれないですよね。

とはいえ、サラは最後まで夢の中にいられたので、登場人物の中では一番か二番目に最後まで幸せな人だったかもしれません。一応ドレスは着ることが出来ましたし。あの時のサラはとても幸せそうで良かったですね。良かったのかなぁ……。
尚、話の最後まで幸せだったかもしれないもう一人はマリオンです。幸せの定義が「ハリーと一緒に過ごすこと」から「薬物キメること」に見事に塗り替えられちゃってますけど。比喩ではなく文字通りマリオンの脳が破壊されてしまっている……。でも破壊したのはハリーなので……。

そもそも薬ありきだったハリーとマリオンの関係性が健全ではなかったのでは? と言われると、そうですねとしか言いようがない。ふわっふわした土台の上にそれっぽいプレハブ建てて幸せそうに寝るな!

 

 

左腕

ハリーの左腕が切断されて終了するの、凄いですよね。

これでハリーは少なくとも(一人では)薬物の静脈注射はできないでしょうし、もうマリオンと手をつなぐこともできなければ両手で抱きしめることもできないし、今後マトモな仕事につけるかもより怪しくなってしまいました。まあマリオンはもうハリーのもとには二度と戻って来ないのですけれど。このまま精神病院送りの可能性もありますよね。喪失が物理的過ぎる。ハリウッドあるある定番展開「全部失った後に取り戻す」の「取り戻す」が微塵も想像できない! いっそ清々しいです。お見事!

 

 

映画『レクイエム・フォー・ドリーム』の感想でした。

俳優陣の演技が凄まじかったですが、そこは語るまでもなく……教訓の映画としてはいささか攻撃力が高すぎますね。間違いなくいい作品でございました。

火力の高いステッカーもいただきました。見えるところに貼って通行人をビビらせるのに使えるかもしれませんね。濁りきったマリオンの目に平和な世界を見せてあげよう。

 

追記:監督の情報を調べていたら、本作の監督が『コート・スティーリング』を撮られた方と知って驚愕。ぜ、全然違う……。まったく分かりませんでした。でもどちらも良作だったので感嘆するばかりでございます。凄い。

cinerotel.jp

↓もしもお気に召されましたら…クリックやスターなど…励みになります! いつも感謝です↓

 

klockworx.com

*1:卵とグレープフルーツのみの食生活。栄養バランスが壊滅的かつ極端過ぎる。日本でも「国立病院ダイエット」という通称で類似の方法が流行っていたようです。どこの病院なんだ……通名が怖すぎる……