チネローテル 映画感想ブログ

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【映画感想】ザ・カース(ネタバレ有)_人を呪っても穴一つ

皆さんは、呪い、お好きですか?

私はもちろん大好きです! 厨二病をそこそここじらせていたので、何冊か呪術本を買っていました。やはり最もオーソドックスな呪いは丑の刻参りでしょうか。藁人形を五寸釘で木に打ち付け、打ち付けでございます。非常に親しみ深い概念ですが、最初にこれを知ったのは、幼少期に見た怪談百物語を題材とした深夜ドラマの一節か、あるいは小説「怪談レストラン」のどちらかですね。幼い頃からこの手の概念に触れられていたとは、なかなか英才教育がなっています。いい時代に育ったものです(※個人的な感想です)。

しかし、誰かに呪いをかけようと思ったことはございません。ありがたいことに今までの人生に呪ってしまいたいほど恨んでいる誰かに出会うことはございませんでしたから。また、呪いというのは別にお手軽最強行動ではございません。人を呪わば穴二つ、誰かを呪うならば自分の墓の穴も掘っておけというのは有名な言葉でございます。

なので、呪いというものはハイリスク・ハイリターンであってほしいというのが私の理想であるのですが、本作における呪いは割と無敵の概念のようでして……。

 

映画「ザ・カース」の感想です。

簡単あらすじ

璃子は東京で美容師の仕事をしながら、親友のあいりと暮らしていた。ある日、交流のある台湾の友人・シューフンのSNSをチェックしていた璃子だったが、投稿写真に髪の長い不気味な赤い女が映り込んでおり、「お前ら全員さっさと死ね」という文章が添えられていた。不審に思った璃子は台湾にいる元恋人のチャーホウに連絡を取りシューフンの様子を尋ねるが、彼女は既に半年前に亡くなっていた。璃子とあいりは相談のもと、シューフンのSNSに投稿を辞めるよう連絡する。すると木槌で紙人形を叩く妙な動画が送られてくる。その日からあいりの様子がおかしくなり……

 

Filmarks短評

評価:★★★(星3)
※グロ描写によるR15+指定。痛々しさは弱めで全体的に作り物感が強い

 

ネタバレなし感想

■ロケーションの雰囲気が素晴らしい(特に台湾パート)

本作は日本と台湾両方の地をロケーションとして使っているのですが、雰囲気が素晴らしいのですよね。特に台湾は本当に良くて、雑多な雰囲気であったり裏路地のどことなく不気味な感じであったりが本作によく合っています。
この手の作品でお決まりの、強そうな道士の拠点あたりの雰囲気もやはりいい。ここは本作の美術チームが手掛けたNetflixの有名ホラー「呪詛」でも同じ良さを感じましたね。私が大好きなホラーゲームに「還願 Devotion」という作品があるのですが、こちらも舞台は台湾で雰囲気も抜群。

台湾ホラーとJホラーの親和性は高い気がします。これからもどんどん制作していっていただきたい。

 

■どこに向かうのかが曖昧

本作、雰囲気や表現の方向性は結構好きなのですが、全体的に気になる点として“結局なんだったんだ”感が強いところにあります。テーマであったり、独自性であったりをそこまで感じませんでした。
なんというか、ほぼホラー映画のテンプレを詰め込んだだけな印象があるのですよね。そこそこホラー映画を好んで見る側としては、だいたい見たことがある展開でしたし。

ホラーというのは、人智の及ばぬ不条理な概念のもと諸々なイベントが発生する作品ということは理解しています。故に、何かしらの目標やテーマを定めないと内容に疑問がより生じやすくなってしまい、鑑賞終了後に不本意な「何?」が生じてしまう場合があると考えています。本作の大まかな展開は、物語の結末から逆算された中身ではないような気がしまして、ちょっと気になりました。別に話がメインでない作品自体は別にあっても良いのですが、なら鑑賞者をはちゃめちゃに脅かしてやろう! みたいなパニックホラーでもなく、不気味でようわからんかったでしょ、みたいなじわじわホラーでもなかったという印象なのでどっちつかず感が否めません。

てっきり「一体誰が、なぜ呪いをかけているのか?」、つまりフーダニット・ホワイダニット的な部分を解き明かすミステリー要素のあるホラーなのかなと思ったのですが、明かされた真実を見ると、ここが見どころとは思えないなという感想になってしまいますので。

で、ホラーのあるある展開を詰め込む作品自体も別にあっても良いと思うのです。有名どころで言えば「CABIN」がそうですよね。去年観た台湾ホラーの「ガラ」や、ゲーム原作のくせにゲームはほぼ関係ない「アンティル・ドーン」もそちらの方向性でした。でもそれらの作品はやりたいことがわかったので、観ていて結構面白かったのですよね。「CABIN」に関しては元々メタ構造&ホラーパロディやったるわ! という内容で、私の生涯ベストに入ってくるレベルの作品ですし、「ガラ」や「アンティル・ドーン」はジャンプスケア・ホラー表現の詰め合わせとしてかなり好みでした。
ですが本作はそういう良さはあまりなくて……勿体ないと感じてしまったのが本音でございます。

 

ネタバレあり感想

注意
ここから先は、映画「ザ・カース」のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。

 

 

 

呪いの一貫性のなさ

本作、割と呪いの幅が広いです。

呪いの方法は「対象の写真がついている紙人形を木槌で叩く」で、呪いによる災いを引き起こすのは赤い服を着た長い黒髪の女(以下、赤い女)です。ですが引き起こされる災いは結構色々とあって、身体の抵抗力を極限まで下げて幻覚を見せることにはじまり、痛覚を鈍らせて自ら命を絶たせようとする定番のものから、肉塊やら髪の毛のついた白子っぽい何かといった料理しか作れなくなるメシマズスキル付与、凄まじい量の泥を吐く現象に、体を乗っ取って口から腕だけ生やして移動する新・移動スキル付与など様々です。ついでに主人公のお父さんも消している(ここは本当に謎。というか父親なんだったんだ……時間制限ありのゲスト?)。何でもありすぎる。

ありすぎるんですけど、なんだかよくわからないのですよね……。赤い女は結局何をしたかったのか。真犯人と組んで、恨みを撒き散らしたかっただけにしては発生する呪いに種類がありすぎますし、赤い女が犯人を襲う場面もある。メタ的な話をするならば、別に現象としてはこちらを脅かしてこようとはあまりしないので、ホラー演出として怖くないのですよね。深く考えるのも野暮なのかもしれませんが、もう少し一貫性があるとか、観ている人を脅かそう、怖がらせようという何らかの意思が見えると良かったのかなと感じました。

 

ノーリスクハイリターン呪いはずるだよ

ずるい!

本作の呪いはノーリスクハイリターン、いくら人を呪っても掘る墓穴は呪った人の数の分だけでオッケー! しかもSNSのアイコンなどの解像度の良さ悪さ関係ない写真を印刷さえできてしまえば呪いはかけ放題です。やったー! えぇ……。

呪いの元凶である存在が人間ではないとか、神的な存在だとかであれば納得感があるのですが、本作の元凶は普通に人間です。化粧濃いめの中年女性。来歴が一切語られないため一体どんな人物なのかはよくわかりません。ただ被害妄想のきらいがあって、SNSの向こう側の相手に無限の恨みを持ち続けるガッツのある凄まじい体力の持ち主です。ついでに人を殺めることもバッチリできてしまいます。人を嫌ったり恨んだりし続けるってとても大変ですから、よほどの精神力をお持ちの方なのでしょう。詳細が最後まで明かされることはありませんが。

赤い女とは友達なのかもしれません。一緒に踊っているし。でも普通に自分以外でも道具を使えば誰かを呪うことはできてしまうので、やっぱり友達でもないのかもしれません。ふわふわしている。このあたりの設定カッチリしていたらもう少し入り込めたのですが……。

この犯人、若干ですが昨年の「ウェポンズ」の真犯人と似通った部分を感じました。詳細は伏せますが、一部展開が一致していましたし。ただあちらは呪いというか、呪術にしっかりリスクがありました。ウェポンズの真犯人はおそらく老い先長くなく、寿命を削るか何かをしているのではと予測できましたし、動機も理解できました。

ですが本作はなんか……動機の割に被害が薄すぎるんですよね。SNSで幸せそうな人が憎たらしいということならば、もっとたくさんの人が死んでいてもおかしくないのですが。それこそ真っ先に殺されるのは芸能人あたりではないのか? そういう疑問が生じてしまうのが本当に惜しい。舞台装置の事情を感じてしまう。なにせ主人公たちと真犯人の繋がりが元々ないので、なぜ主人公たちが狙われたかの真相が気まぐれ以外の何物でもないというのはちょっと、いくらなんでも作り手の事情が過ぎるなぁと……。

SNSを題材にしたホラーとして、「自分の実際の写真やVlogを掲載したら殺されるかもしれない!」というテーマ自体は面白みがあると思うのですが。個人情報を露呈することでストーカーが現れるみたいな話の過激なバージョンと考えればわかりやすいですしね。

 

作り物感

これは好き嫌い分かれるかもしれないのですが一部描写がすっごく作り物なんですよね! ラストシーンまわりとか。あれはなんだったのでしょう……。

ラスト、実は真犯人の女性は殴り殺されていて、彼女の見た夢だったのでしょうか。急にあの辺りから雰囲気というかノリ? が変わるのですよね。主人公たちが真犯人の顔を撮影して笑って、人がたくさん死んでいるとは思えない軽薄なやり取りをする。そこから凄いテンポで主人公と主人公の元恋人を葬る。あの辺りはいっそギャグというか、滑稽でした。

そう考えるとやっぱり殴り殺されたあとの、真犯人から見た世界だったのかな。なら作り物っぽいのも納得がいく。ただ話の途中に出てくる死体まわりもだいぶ作り物っぽかったので気のせいかもしれません。「呪詛」ではそんな感じはしなかったのですが、何があったのだろう……。

 

元恋人である意味

私、てっきり元恋人が真犯人なのかと思っていました。なぜかラストまで呪いの影響をほぼ受けていませんし、襲われる主人公を直前でストップかけたりしていますし。まるで出てくることを知っていたかのような。

全部元恋人が主人公にもう一度振り向いてほしいからやっていたのかなぁ~と。頼らざるを得ない状況にしてしまえば、別れた理由次第ではありますが、うまくヨリを戻せるかもしれないと考えたのかなと思っていました。そんなことはありませんでしたが。

ありませんでしたが……そういう想定もあったのでは? と思うくらいに元恋人のムーブがちょいちょい変なのですよね。途中で脚本が変わったりしたのだろうか。あくまで妄想なので真相は謎でございますが。ミスリードなだけなのでしょうか。

元恋人、終盤までマジで無敵ですからね。急にラストで無敵バフ終了しますけど。やっぱりあの飲み物が悪かったかな。ダークマタ茶。

 

 

映画「ザ・カース」の感想でした。

なんでもありでもいい、不条理でも理不尽でもいい、けれど何か一貫したテーマがほしい、そんなわがままな私でございます。好きなジャンルにはどうしても期待の気持ちが芽生えてしまいますね。公式サイトのデザインやポスター、カラーなどは凄い好きなのですが、諸々の惜しさが気になってしまいました。次回作に期待でございます。

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