信じ続ければ、願いはきっと叶う。
おとぎ話のお姫様はそう言って、自らの夢を叶えます。信じる心さえあればどんなにつらい日々でも抜け出せる、お天道様は見ていてくれるはずだから。それこそシンデレラがフェアリー・ゴッドマザーの手を借りて王子様とダンスを踊ったように。
ですが、それは夢物語でしかないことを知っている人たちは言います。
優しい心も、小さな勇気も関係ない!
物語のヒロインになりたいなら、生まれながらに美しくないといけないんだ!
もしそうでなかったなら、どうしろというの!?
そんなやるせない怒りと果てなき悲しみを、メルヘンさとドギツグロさと虫で煮詰めた一作でした……。
映画「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」の感想です。
簡単あらすじ
※上記は、筆者チネローテル大家によるオリジナルのあらすじです※
Filmarks短評
映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』のレビューを書きました! https://t.co/9Eh1Ks1XVp #Filmarks #映画
— チネローテル大家 (@cinerotel) 2026年1月17日
かなりグロ表現がきつい 基本的なビジュアルは綺麗で可愛らしいのに…
評価:★★★★(星4)
※R15+。そこそこの性描写とかなり過激なグロ描写あり。そして虫が苦手な方も注意
ネタバレなし感想
■露悪的おとぎ話ホラー
グリム童話が特に有名ですが、知名度の高い童話の原作はとんでもなく残酷な話で……ということがあります。そういう背景もあっておとぎ話ホラー作品は一定の需要を感じますが、本作はまさしくそれ。「シンデレラ」を元にした露悪ホラーです。
私はおとぎ話ホラー映画を今回初めて鑑賞したのですが、私個人としては結構しんどかったです。というのも幼い頃から夢と魔法に満ち溢れたディズニー映画を鑑賞してきており、極めつけに実写版「シンデレラ」超最高の映画! という感想を持つステータス民でして。本作鑑賞中、色々な意味で何度気絶しそうになったかわかりません。
といいますのも鑑賞中、実写版「シンデレラ」を盛大にパロディしているような場面がいくつかあったような気がしまして……それこそエルヴィラのビジュアルはドリゼラ(義理の姉)方面な感じがしますし、アグネスのビジュアルもエラ(シンデレラ)ですし、舞踏会の場面で同じ楽曲が流れていて令嬢の名前読み上げシーンもあって…… はいそこまで、それはそう。そもそもシンデレラのパブリックイメージがあって、そこに沿っていれば類似になるのは当然です。多少狙ってやっている可能性もあるのかもはしれませんがパロディの範囲内。コレは私が勝手にダメージを受けていただけですのでお気になさらず。たすけて~
それはそれとしてシンデレラの印象がエログロに侵食されていく……実写版「シンデレラ」を観て精神を落ち着けなくてはいけません。たすけて~
原作のシンデレラがグロ方面つよいらしいため、むしろディズニーのイメージの方が間違っているのか? も、もうわたしにはわかりません うわ~
■ふわっとしたメルヘンkawaiiビジュアルと、ギャップありすぎのグロ
本作、ビジュアルが美しいです。色彩がふわっとしていたり、敢えて劣化したような映像でレトロ感を出したり、場面によっては耽美的な印象もあって昨年の映画「ノスフェラトゥ」を思い出しました(あちらも性表現がそこそこあったので余計に)。陰影の使い方も綺麗だな~と。
そして同時に、グロテスク表現がキッツいです。しかも辛いことに観ていて痛いやつでございます。比喩とかではございません。もう、露骨に、痛いことを、します。やめてください! 耐えられません! いえ、鑑賞中に席を立つのは私が私に課したポリシーに反しますのでどうにか耐えましたけども冗談抜きで半分べそかいてました。気絶しかねないポイントでございました。ああ本当に情けない。血の気が引くとはこのことでございます。
今までもR15+・R18+指定映画を観てきていたはずなのですが……考えてみればスプラッターホラーはほぼ鑑賞範囲外でございました。まだまだ修行が足りない。それほど本作に没入させられたということでもあります。
ネタバレあり感想
映画「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」のネタバレが含まれます。
ご覧になる際はご注意ください。
そこまで欲しいなら欲しい子にあげてよ!
エルヴィラが本当に可哀想。
本作はその感想に尽きます。ディズニー映画などでおなじみの「シンデレラ」の大筋は、「意地悪な継母と義理の姉たちにシンデレラが虐げられる」という筋書きですが、本作の主人公であるエルヴィラは意地悪ではございません。というかむしろ優しい寄りです。とにかく純粋で、王子の詩の本を持ち歩いては彼とのおとぎ話然とした出会いを妄想してしまうような可愛らしい子です。その妹のアルマも全く意地悪ではありません。ちょっと風変わりなところのある姉思いの少女といった感じです。あの母親からよくこの姉妹が生まれたなと思うほど、本作のだいたいのロクでもない・パーソンは二人の母親でございます。
というかどちらかといえば、シンデレラであることを運命づけられたはずのアグネスの方がよほど邪悪に見えました(エルヴィラの外見をからかうようなことをしたアグネスの父も)。おそらくエルヴィラの外見を軽蔑し、再婚の目的がお金だったと普通に口にし、更に王子と結婚するのはお金目当てで本当に愛しているというのは馬の世話人らしく、夜中に馬小屋でそのお相手とよろしくやってしまうような女性です。倫理観と衛生観念が消えている。それを見られては使用人に格下げになるのもまあ納得ではある。そして極めつけは王子の詩を下品に解釈する始末。
でも外見は美しいしダンスも得意だから舞踏会でのダンスのセンターに指名されるし、ダンスのセンターをエルヴィラに譲らざるをえなくなったのに舞踏会当日はフェアリー・ゴッドマザーと化した母親のお陰で美しいドレスを手に入れ王子との優雅なダンスを楽しみ、最終的に王子との結婚にこぎつける。美しければ中身はなんだっていいということなのでしょうか。
アグネスのドレスはフェアリー・ゴッドマザーの美しくあたたかい魔法ではなく、父親の死体に湧いた蛆虫(一応見た目は蚕ではあるのですが、蛆虫が大きくなったように思えてならず)が修復して作っていました(一応魔法なんでしょうけどビジュアルが最悪すぎる!)。やっぱり美しければなんでもいいってことなのでしょう。
よくない!
エルヴィラの努力が何一つとして報われない!
こんな悲しいことがあっていいのでしょうか。エルヴィラのとった行動は(過剰さはあったかもしれませんが)間違いなく努力のひとつです。とんでもない痛みに耐えて整形手術を施して、自らの身体にサナダムシを仕込んで体重も落として、身体的にも精神的にも凄まじい負担を課していました。
それでも、そこまでしてでも、エルヴィラは王子の隣に行きたかったのです。なのに! アグネスは見た目の美しさだけですべてをかっさらっていったんですよ!
もちろん原作よろしく、アグネスも過去に大変なことがあったのかもしれませんし、父親の葬儀を先延ばしにして死体を腐らせるというのは本当にどうかとは思います。けれど父親は再婚相手の家族に嘘をついていたわけですし(お金があるように見せかけていた)、我々はエルヴィラをメインとして物語を鑑賞しているわけで……こんなのあんまりだ。
しかもそうなるように仕掛けたエルヴィラの母親は若者をGETしてよろしくやっているし、責任持てよ! 親だろ!!
エルヴィラ、自分が選ばれなかった原因であるアグネスを結局殺さず、最後の最後まで自分の“努力”でなんとかしようとするの本当に壮絶でした。靴を奪い取って、靴を履けるように“努力”をする。そこまでして、そこまでするなら、もう王子の隣を譲ってあげてくださいよアグネスさん。あなたが来なければエルヴィラは王子の隣にいられたはずなのに……。どうして……。
ただまあ、王子も(森の中で出会ったシーンのことを考えるに)ろくでもない感じはしますので一緒になっても夢見たような毎日は送れなかったことでしょう。エルヴィラはいい意味でも悪い意味でも子供のまま大きくなってしまった。というかこの国全体的に品がなさすぎないですか? 怖いよ~。やりすぎだよ~。
最後は全部元通りどころか状況悪化というオチでございまして、エルヴィラが何をしたって言うんだ。そこまでされる言われはなくないですか。しばらく凹みました。
グロい痛い気持ち悪い
麻酔無しで鼻の骨削るって何ですか!?
つけまつげを縫い付けるってどういうことですか!?
サナダムシ……サナダムシ!? 寄生虫ダイエット!?
もうやめてください ちぎり取らないでください もう勘弁してください
舞踏会後くらいから急に何ギアか上げてくるのなんなんですか? 最初の頃はまだ秩序があったじゃあございませんか。R15+は性的表現のほうかなあとどこかで安心していた私が馬鹿みたいじゃあございませんか(そうです)。
サナダムシがとんでもない長さに成長した表現、どう解釈すればいいのかわからなくてただただ辛かったです。あれは、あの、ああいう表現をしたかったからああなったってことでいいのでしょうか。それともエルヴィラの愛されたいという気持ちあるいは欲望の表れとか。死んじゃうよ。そして舞踏会まわり、美しいビジュアルにたいしてお腹の鳴る音が異物過ぎて辛かったです。
少し興味が出てしまい調べたのですが、実際はサナダムシダイエットをしても無限に空腹になることはないみたいです。むしろ吐き気とかそちらの方が強まるのが基本の模様。もうあれサナダムシじゃなくて別のなにかですって。実物でも10mくらいになることもあるらしいですが、10mより長くなかったか。そんなものはカラスにでも食わせておきましょう。ファンタジーなので御愛嬌。こんな嫌なファンタジー表現あるんだ。
妹ちゃんの話
最後、エルヴィラはすべてを失い、アルマと共に旅に出ます。
アルマってなんだったんですかね。話の大筋にほとんど関わらないので解釈が難しい。話の途中で初潮を迎えたり髪の毛を短く切ったり(まとめているだけかもですが)してボーイッシュな印象になったり、エルヴィラに対して警鐘を鳴らしたり彼女を支えたり最後は母親との間を断ち切ってくれるという様々な役割があったようには思うのですが……エルヴィラが失ってはいけないものをアルマが全部持っていた気がする。強い意思をもった少女であったことは確かです。でも難しい。
アルマとエルヴィラが姉妹ではなく一人だったら、もしかしたらヒロインになれたのかもしれませんね。エルヴィラは優しく純粋な心を、アルマは勇気と意思を持っていましたから。
そういえばアルマってあらゆる言語において「魂」という意味を持っているのですが、もしかしてエルヴィラの魂だった……のでしょうか……? 周囲に踊らされ、最初はともかく途中からは自らの意志かどうかもわからない努力を続けていたエルヴィラに、魂があったのかと言われると少し怪しい。最後はようやく魂を取り戻せたと、そういう話だったのでしょうか。ううむ。
そして混乱のまま、忘れ去られた父親の亡骸(白骨化)でゲームセット。アグネス!? 父親への愛は本物だったんじゃないんですか!? ドレスと一緒に父親の魂も持っていったということでいいのか? アグネス、君の気持ちがわからないよ~!
映画「アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし」の感想でした。
グロテスクな映画で観るのに大変体力を使いましたが、ビジュアルのよさと露悪的ながらも大胆な新解釈は見ごたえがありなんだかんだ好きな作品ではございました。
それはそれとして実写版「シンデレラ」を近い内に必ず見直します。この作品のいいところを見つけられる心も、この作品にずたずたに食い荒らされた心もどちらも持ち合わせているだけの話でございます。心は常に複数あるものだから。
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