筆者が映画館での出来事や思い出についてゆるく書くシリーズです。
映画感想のストックがないときなどに不定期に更新されます。
今日のお話は「映画の前売券」について。前売券、どうして安くなるのか未だにシステムが分かっていませんが便利でございますよね。これからもお世話になります。それではどうぞ。
映画の前売券を初めて買ってもらった日のことを覚えている。
確か、弟とともに母親に頼み込んだのだ。どうしても仮面ライダーの映画が観たいと。当時の私はまあ年相応のガキンチョであり、仮面ライダーが大好きであった。ライダーベルトを買ってもらえる家ではなかったものの、紙でつくったベルトなんかを腰に巻いたり変身カードを描いたりしていた気はする。だが映像作品はそうはいかない。どうしてもこの目で観たい。おそらく泣きながら粘ったと思う。一緒に頼む側であったはずの弟は私の醜態に若干引いていた。急に遠くへ行くな。
勉強の成績を条件に出されたか、あるいは体力テストの結果を一定以上にすべしと言われたかは忘れてしまったのだが、果たして私と弟は無事『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』の前売り券を手に入れたのである。
しかし映画を観に行こうとなったそのときに、私のぶんの前売券チケットだけがなくなってしまっていた。
当時の私はとんでもないうっかりやであり、しょっちゅう物をなくしてばかりであった。あまりのうっかりさにそれを揶揄するあだ名を担任から直々に付けられるレベルであった。だがここまでとは、と当時の自分に絶望したことをよく覚えている。
ポスターのビジュアルがでかでかと書かれた、特別感溢れるフルカラーのチケットを、私はどこかへやってしまったのだ。大切にしまっておいたはずなのに。映画を観られる今日を楽しみにしていたのに。ゴミ袋をひっくり返して探してどこにも見当たらず、私はまたしても泣いた。なんて泣き虫なガキンチョであろう。ぼろぼろになって這いつくばる私を見かねた父親は、何も言わずにチケットを買い直してくれた。
映画を観終えた頃には、私はご機嫌で親にパンフレットをねだっていた。図々しいにもほどがある。確か父と母は同じ時間帯に別の映画を観ていたはずだが、何を観たのかは聞かなかった。仮面ライダーの映画を観られたことが嬉しすぎて忘れてしまったのかもしれない。
今は、前売券はデジタルで購入できる。アプリを使って、紙の代わりに電子チケットが得られて、鑑賞後に壁紙がもらえる。随分とお手軽になったもので、物をなくしがちだった私も前売券をなくさなくなった。その利便性を思うたびに、時折ぼろぼろに泣いているかつての自分を思い出すのだ。
本当に両親には申し訳なかったけれど、あの思い出自体は大事なものだった気がする。前売券を宝物のように眺めて、あといくつ寝たら映画館とその楽しみをきらきら抱えていた自分は、今は少し遠くなってしまったから。
とか言っておきながら、この前前売券を買ったことを忘れて普通に映画を鑑賞しそうになった。これでは忘れる箇所が変わっただけではないか。死ななきゃ直らないのだろうな、この悪癖は……。
(了)